こちらは石川県白山市の山間にある山菜料理の名店です。
セイモアスキー場のそばにあり…と言うか、お店はゲレンデのすぐ横。
到着すると「本当にここなのか!?」と驚きました(笑)
その立地と使用する食材故に営業シーズンはスキーのオフシーズン。
オフシーズンのスキー場なんて寂しそう、と思われるかもしれませんが、広い空間を占有しているようで朝の散歩も含めて楽しかったです。
お店の前には手取川が流れ、清流はキラキラと美しい。
夜には空に満点の星が輝き、都会では見られない夜空を楽しませてくれます。
その上、宿で源泉100%の河内千丈温泉に浸かれるところも嬉しい。
星空と温泉で十分幸せを感じられますが、本当の幸せはもちろん食にあります。
こちらの山菜料理は卓越した専門技術に裏打ちされており、一般的な「山の料理店」とは次元が異なります。
食通の友人から話は聞いておりましたが、いざ頂いてみると期待以上!
包丁、味付け、出汁など全てが懐石料理店のそれであり、ご高齢の女性がお一人で作られているとは、驚嘆を覚えます。
「女の仕事なので」と力強く語られる姿を見て、料理への愛情と力強い自負を感じた次第です。
お酒は全て菊姫酒造のものとなり、今回頂いたのは、純米・鶴乃里、山廃・呑み切り原酒。
先付
濁り酒、蕗の薹辛味噌、カタクリ、ヨモギの葛寄せ。
濁り酒は乳酸に日本酒的な苦みが利いており、大人味の旨さ!
カタクリは甘酢味噌で和えているのかと思いきや、麹を使用している模様。
食感は大変シャキシャキ。
蕗の薹は香りしっかりだが、辛味を利かせており良き酒肴。
ヨモギの葛寄せも香りが心地良く、口溶けも良好。
先付を頂き、使用されている水のクオリティも高いと確信する。
木ノ芽とアケビの新芽の和えもの
アケビの新芽なんて頂くのは初めてだが、香りが独特で香ばしい。
塩気を利かせエグみを除去し、木ノ芽でアクセントを付与している。
鮎の山椒炊き、土筆、ノカンゾウ
土筆は苦みが皆無!
ノカンゾウは軽妙な食感!
力強い香りと甘みもあり、醤油を用い甘みを引き立てている。
鮎は飴炊きにされており、肝の風味と苦味が活きている。
(鮎については元々は保存食であったのではないかと思われる)
岩魚のお造り
手前は皮の湯引き、あしらいは山葵の葉と花。
身は脂が抜群に乗っており、香りは繊細。
いや、力強い香りはあるのだが、川魚的なクセを感じさせない。
皮は白眉。
トゥルトゥル美味い。気付いたら…溶ける!
身の方も骨が全く当たらず、ご主人(女性)の腕を感じさせる。
椀
椀種は自家製飛竜頭で椀妻は椎茸、吸い口は三ツ葉と木ノ芽。
吸い地は上品で、まろやか且つ旨味たっぷり。
尖ったところが無く、ご主人の人格を表しているかのよう。
囲炉裏で焼いた椎茸が香りのアクセント。
自家製の飛竜頭は大変美味しく、銀杏、木耳、黄人参と彩り豊か。
コゴミの胡麻和え
超濃厚で香ばしい黒胡麻の和えもの。
コゴミはみっちりした食感で、素晴らしい火入れ。
岩魚の焼きもの
振り塩が上品で、火入れは巧みにしっとり。
近隣の天然モノとの事で、味わい深い岩魚だった。
山菜の天婦羅
手前から小豆菜、蕗の薹、タラノメ、コシアブラ、独活、ニワトコ、モミジガサ、コゴミ。
香りと風味が全て全く異なり、贅沢!
衣は薄くサックサクで、油切りも良い。
擬宝珠とウルイのぬた
擬宝珠は瑞々しく、トロトロで、軽い苦味が良い口直しに。
なお、こちらの器はほとんどは山菜が描かれており、面白い。
お食事
土筆の炊き込みご飯が心から美味しい。
香の物は「おくもじ」と言う白山の郷土料理で、前の年に塩漬けした菜っ葉を塩出しして炊いたもの。
魚の干物の出汁が利いていた。
味噌汁の種は何とアザミ。
勝手にイメージしたエグミは皆無で、野趣としての香りを楽しませてくれる。
苺
朝食もまた格別。
アザミのお浸し
右下の緑の野菜は独活で、ほの甘く炊いている。
ご飯は土鍋炊きで、美味しい。
全て素朴…しかし他には決して無い味わいに昇華させておられます。
しかも、味覚的バランスが上品であり、見事と言う他ありません。
おもてなしの心も素晴らしいです。
店名:うつお荘(うつおそう)
食べるべき逸品:絶品山菜料理。
予算の目安:1泊2食付き23,250円
最寄駅:なし
TEL:076-272-1392
住所:石川県白山市河内町内尾ロ35
定休日:要確認
本記事のリンクには広告がふくまれています。