酒ディプロマ(SAKE DIPLOMA)攻略マニュアル Day.2「洗米〜蒸きょう〜製麹」

酒ディプロマ02

こんにちは、鮨と日本酒をこよなく愛する、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

前回は「日本酒の定義と分類」と「日本酒の歴史」について、説明しました。

今回のDay.2については、「日本酒の造り」に入ります。

造りの中でも、酒米を蒸して、麹米を作るところまで説明します。

  • 麹:お米+麹菌=米麹
  • 酒母(酛):米麹掛米、酵母、乳酸、水
  • 醪:酒母+米麹掛米、水
  • 上槽(しぼり)

日本酒造りで最も重要なのが「製麹」です。

「一麹、二酛(酒母)、三造り(醪)」と呼ばれるほど。

すしログ
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一緒にしっかりと押さえましょう!

※本記事の情報は2022年度のテキストである『SAKE DIPLOMA教本 Second Edition』(2020/3/1)に基づきます

酒米の精米と枯らし

それでは、日本酒造りにおけるお米の扱い方から説明します。

日本酒の製造は、お米そのものから始まっています。

  1. 精米
  2. 枯らし
  3. 洗米
  4. 浸漬
  5. 蒸きょう

精米は「磨き」とか「精米歩合」として知られるので、聞いたことはあるはず。

食用米の精米歩合が92%のところ、一般的なお酒は70%ほどで、精米時間は8時間に及びます。

お米
写真:飯尾醸造

精米後、お米の温度が高まり、水分が減少するので、最低2週間ほど袋の状態で放置します。

これを「枯らし」と呼び、洗米前のプロセスになります。

「枯らし」の目的は、お米の水分を飛ばすことではなく、むしろ水分を吸収させる「吸湿」が目的なので注意!

 

酒米の洗米・浸漬・蒸きょう

洗米の目的はお米の表面の糠を取り去ることですが、この時点で吸水が始まってしまいます。

洗米は洗米装置で行われ、その後すぐにタンクに運ばれ、浸漬しんせきします。

浸漬では「白米吸水率」が重要で、これが酒造りにおいて最も重要なポイントです。

  • 白米吸水率=(浸漬米の重量−元の白米重量)÷元の白米重量
  • 浸漬前の白米水分が1%低いと、白米吸水率が3%高くなる
  • 精米歩合が70%以下の場合、吸水速度が速い
  • よって、吟醸酒の場合は限定吸水を行う(10分以内に水切り秒単位で)

白米吸水率が高すぎると、柔らかい(水分過多な)蒸米になり、製麹せいきくが失敗してしまいます。

酒米の蒸きょう

蒸きょう
写真:飯尾醸造

じょうきょう」の目的は、デンプンのα化と、麹菌が作った酵素でお米を溶けやすくするためです。

良い酒米・蒸米の条件は、「外硬内軟がいこうないなん」と言われます。


外硬内軟とは?

  • お米が完全にα化している
  • 適度の硬さがある
  • 表面がベタつかない(=さばけが良い)
すしログ
すしログ

美味しい「すし飯(シャリ)」に似ている!と感じました。

そして、「蒸きょう」の手段と所要時間は下記のとおりです。

  • こしきの場合は、60分行う
  • 連続蒸米機の場合は、25~40分

連続蒸米機はベルトコンベア式で、お米を移動させながら名前の通り連続的に蒸す機械です。


この後の冷却については、自然冷却法もしくは強制冷却法(連続蒸米冷却機)で行われます。

連続蒸米機
写真:飯尾醸造

自然冷却法は吟醸酒造りで多く見られるそうです。


蒸米は製麹に使用する麹米と、仕込みに使用される掛米に分けられます。

蒸米の冷却目標温度は、以下の順に高くなります。

製麹>酒母の仕込み>醪の初添>醪の留添

次に、蒸米を麹米にする製麹に移ります。

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日本酒の造り:製麹

は菌で、カビの一種になります。

麹菌には黄麹、白麹、黒麹があり、日本酒に使われるのは黄麹です。

麹の役割は、蒸米のデンプンとタンパク質を分解する酵素を作ることです。

ざっくりと役割を示すと、下記のとおりです。

  1. 麹:お米+麹菌→麹菌がお米を溶かす酵素を作る
  2. 酒母(酛):米麹掛米、酵母、乳酸、水→麹菌がお米からブドウ糖を作り、酵母が糖をアルコールに変える
  3. 醪:酒母+米麹掛米、水→安定的にアルコール発酵を促す
  4. 上槽(しぼり)

そして、製麹の流れを示すと以下のとおりです。

工程日11122223
工程名引き込み種切り床もみ切り返し盛り仲仕事仕舞仕事出麹
品温36℃強35℃など34~36℃38~39℃
→36~38℃
40~43℃
備考目標温に調整麹菌胞子を付ける粒をバラす熱を籠らせる麹積層を広げる麹積層を広げる熱を逃がす

黄麹の主な酵素


黄麹が生産する主な酵素は、4つあります。

  • αアミラーゼ:デンプンのブドウ糖の構造を断ち切り、デキストリンに分解
  • グルコアミラーゼ:デキストリンをブドウ糖に分解
  • 酸性プロテアーゼ:タンパク質をペプチドに分解
  • 酸性カルボキシペプチダーゼ:ペプチドをアミノ酸に分解

これらは高確率で試験に出ます。

また、お酒ごとのアルコール発酵の仕組みは下記のとおりです。

  • ワイン(単式発酵):ブドウ+酵母→発酵
  • ビール(単行複式発酵):麦芽+お湯=糖化+酵母→発酵
  • 日本酒(並行複式発酵):お米+麹菌=糖化&糖+酵母→発酵

並行複式発酵によって、日本酒が最もアルコール度数の高いお酒になります。

製麹の方法

「製麹」は48時間かけて麹を完成させる作業です。

製麹室(麹室)で行われます。

製麹室
写真:飯尾醸造

麹室は一般的に32℃ほど。

ここで使われるお米が「麹米」で、麹が生み出す成分が酒質に影響を及ぼします。

種麹は複数をブレンドして製品化されています。


それでは、製麹について、順を追って説明します。

製麹1日目(床期間)

製麹1日目は、「床期間」と呼ばれ、3つのパートで構成されます。

  • 引き込み:36℃強まで冷めた蒸米を搬入
  • 種切り:種麹を蒸米に振る、1分間を空けて2回行う
  • 床もみ:一粒一粒に麹菌の胞子がつくよう、皆で混ぜる
すしログ
すしログ

鮨で模範とされる「人肌のシャリ」は36℃くらいなので、ほぼ同じ温度です。

種切り後の白米吸水率が麹の出来を左右します。

目標数値は吟醸酒で32%他のお酒で33%ほどです。

麹菌は相対湿度97%以上、1時間で胞子が発芽するため、種切り後には布で覆います。

製麹2日目(棚期間)

製麹
写真:飯尾醸造

製麹2日目は、「棚期間」と呼ばれ、5つのパートで構成されます。

  • 切り返し:床もみから8〜10時間後の朝、ほぐす作業
  • 盛り:表面積を小さくしつつ、厚く盛る→熱をこもらせて品温を調整する、酸素量を増やす
  • 仲仕事:6〜10時間後、34〜36℃、盛りで片方に寄せていた麹積層を少し広げる
  • 仕舞仕事:6〜7時間後、38〜39℃ハゼ回り7分・栗香・甘味あり→終了のサイン
  • 数時間後に40〜43℃で安定する

製麹においては、温度が重要です。

その理由は、日本酒の味に影響するため。

醪のアミノ酸を増やさないよう、グルコアミラーゼが多く、酸性カルボキシペプチダーゼが少ない麹を目指します。



麹の酵素の活性温度

  • グルコアミラーゼ(ブドウ糖を作る):40〜43℃がピーク
  • 酸性カルボキシ ペプチダーゼ(アミノ酸を作る):35℃がピーク

製麹3日目(出麹)

そして、3日目、最後のプロセスが「出麹」です。

朝に、麹の甘味と麹菌の形態変化(ハゼ込み)を確認して「出麹判定」を行います。

吟醸酒は出麹が遅く、他のお酒は出麹が早い特徴を持ちます。

出麹は、麹を化繊のメッシュや朝布の上に薄く広げて、塊を崩し、熱や湿気を逃す作業です。


出麹後のプロセスは2つに分かれます。

  • 出使い:その日のうちに醪へ投入する方法
  • 麹の枯らし:1日寝かせて出麹乾燥を行い投入する方法

「麹の枯らし」によって酸度が0.2ほど低く、香りがスッキリし、味のクドさや雑味が少なくなります。

その理由は、麹菌以外の微生物が乾燥によって死滅するためです。

麹の枯らし
写真:飯尾醸造

また、麹菌以外の微生物を死滅させられるため、麹菌の生育をベストのところで止められます。

それに伴い、老ねた麹にならず、狙いの香味を付けることができます。


それでは、このあたりでDay.2を終えます。

Day.3で会いましょう!

日本酒大好き、すしログ(@sushilog01)でした。

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