こんにちは、鮨と酒をこよなく愛する、すしログ(@sushilog01)です。
さて、フランス・パリと三軒茶屋に醸造所を構える「WAKAZE(=和風/若勢)」。
従来の日本酒の製造方法とは異なる「クラフトサケ」で日本酒の可能性を広げる、ポップで楽しい醸造メーカーです。
ただ、フランスでのビジネスが好調なため、パリに集中すべく三軒茶屋は休業されることになりました。
2022年8月末で休業してしまいましたが、本記事では「WAKAZE」の魅力と個性に迫ります!
本記事は3部構成でお届けします。
すでに「WAKAZE」をご存じの方、どれを飲もうかな?と考えている方は、2部がオススメ。
ペアリングに興味のある方は3部がオススメです。
タップできる目次
クラフトサケ醸造所「WAKAZE(ワカゼ、和風、若勢)」とは?
「WAKAZE(ワカゼ、和風、若勢)」は、「日本酒を世界酒に」と言うビジョンを掲げ、従来とは異なる方法でお酒を造る醸造会社です。
あまり一般的には意識されていませんが、通常の日本酒の製造方法は酒税法で決められています。
酒税法と言うのが意外ですよね。
定義としては、日本産の「米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたもの」で、日本国内で造られたお酒を指します。
「日本産の原料」で「日本国内製造」であるところがポイント。
「WAKAZE」は海外産の原料を用い、海外でも醸造するため、「日本酒」ではなく「サケ」のメーカーになります。
そして、米、米こうじ以外の「副原料」も用いるため、「クラフトサケ」を名乗っている次第です。
「クラフトサケ」って何?という方は多いと思いますので、「WAKAZE」の説明の前に簡単に説明します!
「クラフトサケ」とは?
「クラフトサケ」は最近注目を集めていて、2022年6月27日には「クラフトサケブリュワリー協会」が設立されました。
協会を運営する醸造所は、7つ。
- WAKAZE(ワカゼ・パリ)
- haccoba(ハッコウバ・福島)
- LIBROM(リブロム・福岡)
- LAGOON BREWERY(ラグーンブリュワリー・新潟)
- 稲とアガベ(秋田)
- 木花之醸造所(東京)
- ハッピー太郎醸造所(滋賀)
そして、同年8月20日~21日には、「稲とアガベ」のある秋田県JR男鹿駅前で「猩猩宴」が開催されました。
イベントでは7つのクラフトサケ醸造所が集い、アツい会になった模様です。
「クラフトサケ」は今後さらに注目を浴びるはずです。
「WAKAZE」のクラフトサケの特徴とは?
さて、「WAKAZE」に話を戻します。
「WAKAZE」のお酒を頂いた感想としては、日本酒の固定観念を破壊するには十分すぎる面白さがあると感じました。
これは「日本酒」ではなく、本当に「クラフトサケ」です!
あまりにもキャラが立っているので、保守的な人が飲むと「日本酒じゃない」と全否定しそうです。
ただ、伝統に固執し続けるだけでは、日本酒の消費量は伸びないでしょう。
クラフトサケをきっかけに日本酒の魅力を知る人が増えるのは間違い無い、と僕は感じます。
面白さと美味しさを合わせ持つクラフトサケは、今後楽しみなジャンルです。
ちなみに、世間一般の「日本酒に対するネガティブなイメージ」を確認すると、「味が苦手」、「匂いが苦手」、「アルコール度数が高い」「二日酔いになりやすい」、「男性向け」といった意見が目立ちます。
【参照】
▶昭和女子大学:女子大生の日本酒アンケート調査(2016年2月)
▶マイボイスコム株式会社:日本酒に関するアンケート調査(2014年2月)
このイメージについては、日本酒を日常的に飲んでいる人からすると、「今は違う!」と感じるところでしょう(笑)
僕もそうです。
ただ、日常的に飲んでいない人にとっては、最初に飲んだ日本酒のイメージが重要で、多くはハタチになった若い頃の飲酒体験なので、ネガティブなイメージで止まってしまうのは不思議ではありません。
要は、ファーストインプレッションで悪い酒に出会いやすいのが、残念ながら一昔前の日本でした。
そのような文脈で、「WAKAZE」のお酒は、「味が苦手」、「匂いが苦手」、「アルコール度数が高い」「二日酔いになりやすい」、「男性向け」の真逆を行くところが特徴になると感じます。
つまり、軽やかな味、爽やか or 甘やかな香り、低アルコール、二日酔いしない、女性向け…というところが、「WAKAZE」のお酒が受ける理由だと思います。
では、次に「WAKAZE」のお酒を順にご紹介します。
「WAKAZE(ワカゼ)」のお酒を紹介!
「WAKAZE」のお酒はバリエーションが豊かです。
中から、実際に頂いたもので、入手できる銘柄をご紹介します。
ザ・クラシック(THE CLASSIC)
パリ醸造所で造られる「WAKAZE」の代表作です。
南仏のカマルグ産のお米を、ほとんど磨かずに醸造しているそうです。
フランスのワイン分化を考慮してか、アルコール度数は13%と低め。
味わいはスッキリしつつコクが有り、料理と合わせやすい方向性です。
「WAKAZE」に興味がある人は、まずは「ザ・クラシック(THE CLASSIC)」と「三軒茶屋のどぶろく」を飲んでみると、醸造所の個性が分かるかと思います。
こちらは、ネットで入手が可能です。
ワイン酵母フランス造りの「ザ・バレル(THE BARREL)」
乳製品を思わせる爽やかな香りが魅力です。
白ワインと米の融合を予感させる香りもあって、これは個性的!
「ザ・クラシック(THE CLASSIC)」よりも更に強い個性を求める方にオススメです。
ただ、在庫は少ないので、品切れになっている場合、入荷を待つ必要があす。
三軒茶屋のどぶろく
変わり種のどぶろくも多数造られていますが、最初はベーシックなどぶろくがオススメです。
《季節限定》三軒茶屋のどぶろくピスタチオ
かなりピスタチオ感が強い、デザート志向のどぶろくです!
単体でも美味しいですが、デザートやクッキーと合わせても美味しい、超個性派。
《最新作》三軒茶屋のどぶろくソカタ
さらに、変わり種で、ルーマニアのドリンクをイメージして、レモンとエルダーフラワーを使用したどぶろく。
マスカットのような香りがある、不思議などぶろくです。
サンチャスミサケ「柚子×七味」
かなりしっかりした柚子と七味の香りを楽しめるクラフトサケです。
七味の辛味もピリッと楽しめ、キャラが立ちまくっています。
燗酒で頂けば、和食に合わせやすいです。
サンチャスミサケ「スミレ」
スミレの香りがガツンと感じる、香水のような香りのクラフトサケです。
これは好みが分かれること必至!
僕個人的には華やかすぎてひるんでしまいましたが、女性でスミレなどの華やかな香りが好きな人なら、高確率でヒットするかと思います。
こういった個性が確立したお酒は、プレゼントにも良いですね。
スパークリングサケ「FONIA」
ジャスミンと日本酒を融合した斬新な微発泡酒。
華やかな香りのお酒ですが、山形で仕込み、原料米は出羽燦々、酵母はきょうかい6号(新政酵母)と結構硬派な造り。
味醂とお酢で割ったカクテルで頂きましたが、爽快でした。
こちらは公式サイトでは販売されておらず、Amazonと楽天での販売となるそうです。
三軒茶屋「WAKAZE TOKYO」のペアリングコースを紹介!
それでは、実際に頂いたペアリングコースの詳細をご紹介します。
ペアリングコースの内容
- SAKEカクテル:柳蔭
- 樽熟成SAKE
- 1皿2酒
- ? SAKE
- 上槽体験
- SAKEカクテル
- デザートペアリング/甘酒
- 三茶どぶろく
- 酒米/酒粕
- デザートペアリング/甘酒
日本酒と料理のペアリングについては、ワインとフレンチのそれに比べると未だにプリミティブで、まだまだポテンシャルがある領域だと思います。
マリアージュが奏功しているペアリングは決して多くはありません。
と言うか、極端に稀有です。
その意味において、クラフトサケと料理を合わせる「WAKAZE」三軒茶屋の試みは大変面白い試みだと感じました。
どぶろくやフレイバーが強いものは合わせる技術やコースの構成力が試されますが、それを体感できたのも訪問した甲斐があります。
ただ、語弊を恐れずに言うと、クラフトサケを頂いていると、通常の日本酒も飲みたくなりました(笑)
これはこちらがブルワリーレストランであるため、どうしても提供するお酒の味が似てくることも要因かもしれません。
ただ、それ以上に、フレイバーや酸味を強めたお酒が多いと、コクのあるボディがしっかりしたお酒も頂きたくなることが分かりました。
例えば、生酛造りの純米酒など。
結論としては、クラフトサケと日本酒は二者択一にするのではなく、お互いに選択肢の一つとして考えると良いと確信します。
新しいものは二者択一にされがちだし、むしろクリエイター側がそのようにしてしまう事も多々ありますが、本当の多様性は二者択一から生まれるわけはありません。
SAKEカクテル:柳蔭
江戸時代の味醂と焼酎で作るカクテルをアレンジする、素敵な試み。
上方で「柳蔭」、江戸で「本直し」と呼ばれた、夏の酒だ。
「WAKAZE」では、スパークリングサケ「WAKAZE FONIA tea ORIENTAL」と味醂をブレンドし、お酢も加えている。
香りの面ではお酢が強く、味の面では味醂の味が強いが、味醂単体の甘味と香りのアタックは弱い。
自然な甘味と酸味が夏に嬉しいカクテルであった。
樽熟成SAKE
樽熟成のSAKEである「ザ・バレル(THE BARREL)」と、創作料理【たこ焼きDE ITALIAN】を合わせる。
「ザ・バレル(THE BARREL)」はフランス醸造所生まれのサケ。
使用するお米はカマルグ産、白ワイン酵母で造り、赤ワイン(ピノ・ノワール)の樽で熟成させているそうで、否応なしに期待が高まる。
香りは生酛造りのような乳製品的な香りがあり、ヨーグルトやサワークリームっぽい爽やかさ。
さらに、青竹のような爽やかなキレのある香りが漂う。
確かに白ワインと米の融合を予感させる香りもある。
また、樽由来のナッティな感じも魅力だ。
味わいは甘味よりも酸味のキレがあり、苦味が引き締める。
キレがありつつ、じんわりと旨味が残り、余韻はサラッと流れ端正。
中にはクリームチーズを仕込み、ソースは塩麹入りのトマトソース。
ワインのエッセンスがあるサケに、イタリアンの要素を加えた創作料理とは面白い。
お酒との相性が良い。
トマトの酸味やクリームチーズの香りとコクが、上記の特徴を持つサケと合う。
1皿2酒
「サンチャスミサケ スミレ」と「ザ・クラシック(THE CLASSIC)」を、【樹熟トマトのりんご飴風ファルシ】に合わせる。
「サンチャスミサケ スミレ」は、スミレの花とリキュールを加えて醸造するクラフトサケ。
お米は飯米の「つや姫」で、ビオラ、ブルーベリー、バイオレットリキュールを加えている。
香りは正にスミレ。
味わいとしては、予想外に甘味が弱い。
酸味はきめ細かくキリッとしていて、コクを伴った苦味が特徴的だ。
余韻も長い。
試みとしては面白いが、香水のような香りは好みが分かれるところだろう。
まさに香水そのもののように。
香りは味覚以上に好みに左右されるので、フレイバーを強化したサケは人と料理を選ぶようだ。
「ザ・クラシック(THE CLASSIC)」はフランス・カマルグ産のお米、水、ワイン酵母を使用し、完全にフランス100%で造るサケ。
香りは「ザ・バレル(THE BARREL)」に似ている部分がある。
甘味は非常に穏やかで、強い酸味が特徴。
とは言え、コクのある苦味もあり、余韻はやや長い。
一般的な日本酒よりも軽い味に仕上がる理由は、水の硬度であるようだ。
日本よりも4~5倍も硬い水とのこと。
それぞれをお料理に合わせて、香りの変化を楽しませる趣向が面白い。
樹熟トマトの中には、ズワイガニ、リコッタチーズ、山形産のスイカを使用している。
特にスイカと「ザ・クラシック(THE CLASSIC)」の相性が良い。
? SAKE
ブラインドテイスティングで副原料を当てるサンチャスミサケと、【鮎のコンフィ】を合わせる。
正解の副原料はミント、スイカ、ラズベリーとのことで、商品名は「スイカモヒート」であった。
ミントの香りがしっかりしていて、確かに「スイカモヒート」だなあと実感する味わいのクラフトサケ。
鮎のコンフィはバッチリ骨までホロホロ。
だだ茶豆の麹のソースが魅力的で、軽い酸味が付いている。
鮎の香りに「スイカモヒート」を合わせる試みが面白い。
上槽体験
「三軒茶屋のどぶろく」を自分たちで搾る面白い試み!
搾るのは難しく、袋が破れて結局、どぶろくのまま頂くことになった(笑)
しかし、商品の「三軒茶屋のどぶろく」も同時に頂ける。
右が上槽(失敗)したもので、左が通常品だ。
酸味とビリビリした発酵感があり、酸味と苦味がキリッとしている。
どぶろくとして大変美味しい。
ミルキーでありながら、米の存在感と強い石灰(ミネラル)感がある。
お米がつや姫だからか、粒が溶け残っていて、アルデンテ感がある。
SAKEカクテル
【発酵から揚げ串】に、「三軒茶屋のどぶろく」とビールのSAKEカクテルをペアリング!
鶏から、米、ビールと、合わないわけがない組み合わせだ!
SAKEカクテルの名前は「神様のどぶビー」。
由来は、「三軒茶屋のどぶろく」は、世田谷の神社の湧き水を仕込水に使用していて、合わせる「鹿嶋パラダイスBeer」は鹿島神宮の湧き水を使用しているためだそうだ。
ペアリングはバッチリで、鶏からは鶏肉をどぶろくと塩麹で漬けている点も相性を上げている理由だ。
デザートペアリング/甘酒
「三軒茶屋のどぶろくピスタチオ」と口直しのデザートを合わせる。
「ピスタチオどぶろく」とは、如何なものか!?と飲んでみたところ、想像よりもビックリだった。
ピスタチオはゴリゴリと入っていて、風味もたっぷりと滲み出ている。
しかし、ベースは確かに酒であり、どぶろくだ。
ちょっとマニアックな話になるが、醪の品温は17℃くらいで、そして下げていき、発酵が止まるマイナス4℃以内で造っているそうだ。
かき氷はグラニテで、パイナップルヨーグルトをかけ、ソースには先ほどの上槽体験で生じた酒粕を使用している。
塩気を軽く利かせているのが爽やかだ。
そして、ピスタチオのどぶろくと相性が良く驚いた!
三茶どぶろく
ソカタをイメージしたどぶろくと、【鯛の鯛焼きベッカフィーコ風】を合わせる。
ソカタはルーマニアのドリンクで、エルダーフラワーとレモンを使っているそうだ。
「WAKAZE」のどぶろくには、酒母の段階でエルダーフラワーとレモンを使用して仕込むそうだ。
【鯛の鯛焼きベッカフィーコ風】はオランデーズソースで。
魚が右向きである点と、シンシアブルーのオマージュである点が少し気になったが、味は良い。
爽やかさのあるどぶろくとの相性もなかなかだ。
酒米/酒粕
和食のエッセンスを感じる【サンチャスミサケ柚子×七味】と、【肉巻きおにぎり】を合わせる。
柚子と七味を用いたクラフトサケを、燗酒に。
柚子の香りが良く、七味も上品にピリリと辛い。
おにぎりには、山形のお米「雪化粧」磨き50のお米を使用している点が面白い。
ご覧の通り小粒で、おにぎりとして食べてもパラパラだ。
粕汁はやたら旨味が強いが、その理由は「サンチャスミサケしいたけ」の酒粕を使用しているためだそうだ。
「サンチャスミサケしいたけ」は、味わいこそ日本酒だが、旨味が強い。
デザートペアリング/甘酒
デザートに「オリエンタル(ORIENTAL×ORIENTAL)」を合わせる。
「オリエンタル(ORIENTAL×ORIENTAL)」は、ジャスミン茶、ドライみかん、食用バラ、コリアンダーシード、ハイビスカスを使用していて、もはややりたい放題である。
山形県の「花笠まつり」のモチーフである紅花をイメージした白桃の配置。
華やかな香りのサケと合わせる。
全体的に、色々な気づきを与えてくれる貴重な経験でした!
ご自宅でペアリングをされる方は、参考にしてみてください。
「WAKAZE TOKYO」のお店情報と「WAKAZE」の購入方法
「WAKAZE TOKYO」は休業中ですが、お店情報を記載しておきます。
- 店名:WAKAZE TOKYO(ワカゼ トーキョー)
- 電話番号:なし
- 住所:東京都世田谷区太子堂1-15-12
- Googleマップのリンク
- 最寄り駅:三軒茶屋駅から300m
お酒の入手方法については、冒頭に記載したとおり、下記のオンラインストアで購入できます。
そして、公式ストアに在庫がないものは、Amazonもしくは楽天のショップで購入可能とのことです。
お酒の進歩に期待が高まる、すしログ(@sushilog01)でした。
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