こんにちは、鮨と日本酒をこよなく愛する、すしログ(@sushilog01)です。
今回は今西酒造【三諸杉 菩提酛 純米酒】をテイスティングします。
三諸杉自体が素晴らしいお酒ですが、これは良いですねえ…
日本酒を勉強して飲むと更に美味しい傑作です!
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「今西酒造」さんは、奈良県桜井市にある酒蔵です。
創業年は1660年(万治3年)と、日本でも非常に古い歴史を誇ります。
酒蔵は寒暖の差が激しい気候と三輪山の伏流水に恵まれ、酒造りに最適な環境を持っています。
酒造りの哲学は「清く、正しい、酒造り」。
仕込み水は、三輪山の伏流水を使用し、水質はやや軟水でやわらかい口当たりが特徴です。
使用米は、山田錦と奈良県唯一の酒造好適米「露葉風」を主力品種としており、契約農家と共に育てています。
今回ご紹介する【三諸杉 菩提酛 純米酒】の特徴としては、商品名に入っている「菩提酛」です。
これは「酒ディプロマ」の試験でも問われる重要な酒造りの手法。
詳しく説明しますね。
「菩提酛」は、室町時代に奈良の「菩提山正暦寺」で編み出された日本最古の酒母(酒造り)です。
これによって奈良は「日本清酒発祥の地」とされます。
「え、お寺でお酒造り!?」と驚く方もいらっしゃるかもしれません。
本来、寺院での酒造りは禁止されていますからね…。
しかし、神仏習合の形態をとる中で、鎮守や天部の仏へ献上するお酒として、特別に「僧坊酒」として造られるようになりました。
お寺は荘園を持っていたので、お米があり、酒造りが出来るわけです。
「菩提山正暦寺」は最盛期には120坊も抱え、「僧坊酒」の筆頭格となりました。
「菩提山正暦寺」の酒造技術は目を見はるものがあり、以下の技術が編み出されました。
なお、「菩提酛」の成立時期は室町時代中期と推測され、1489年『御酒之日記』などで確認可能です。
- 三段仕込み
- 火入れ
- 諸白造り
- 菩提酛造り
これらは現代にも残る凄い技術です。
「三段仕込み」は腐造を防ぐために編み出された手法で、現代まで続く主流の方法です。
野生酵母に清酒酵母がやられないよう増殖を待ちながら、3回に分けて仕込みを行います(初添、仲添、留添)。
さらに火入れを行うことでお酒の味を安定させます。
フランスの科学者、ルイ・パスツールがビールやワインの劣化を防ぐために「低温加熱殺菌法」を発表したのが1866年。
その400年近く前に日本で既に行われていたので、酒造りにおいては日本酒の先駆性は世界で突出しています。
そして、「諸白造り」も現代まで生きる日本酒造りの原型です。
これは端的に言って、麹米と掛け米(蒸米)の両方に精白米を用いる方法です。
「諸白造り」以前は、麹米には精米していない玄米を、掛米には精白した米を用いる「片白造り」が一般的でした。
精米技術は文明の進歩とともに向上しつつある(現在進行系!)ので、現在は進化系の「諸白造り」が定着している状況です。
最後に本題の「菩提酛」。
製法の特徴は、「そやし水」と呼ばれる乳酸酸性水を使って酒母を育成することです。
この酸性水は、乳酸発酵によって生じ、酵母菌が活動しやすい環境を作り出します(それに伴い夏期の酒造りを可能にしたと言われる)。
- 蒸す前の生米を仕込み水に約2日間浸漬させる
- 乳酸発酵が始まり仕込み水が乳酸酸性水(そやし水)となる
- 浸けていた生米を取り出し、これを蒸す
- そやし水は仕込み容器(甕、木桶、タンク)へ投入する
- 蒸しあがったお米と米麹を容器へ投入する
- およそ10日から2週間ほどかけて酒母を育てる
「菩提酛」で造られる酒は、生酛系のルーツとして、天然の乳酸菌を活かした個性的な酸味が特徴となります。
「今西酒造」さんも正暦寺の境内より分離した「正暦寺乳酸菌」と「正暦寺酵母」を用いて酒母造りをされているそうです。
その独特の味わい(濃醇旨口)で日本酒愛好家を魅了しています。
現代では、奈良県と岡山県で積極的に用いられていて、温故知新の魅力的な酒造りを可能にしています。
しかし、「菩提酛」は現代まで途絶えていました。
江戸時代に主流の酒造りは「生酛」で、その後、1909年に嘉儀金一郎によって「山卸廃止酛(山廃)」が編み出され、明治時代末期(1900年頃)には、江田鎌治郎によって「速醸法」を編み出されてから、現代では日本酒の約90%が「速醸法」で造られています。
奈良県では1996年に若手蔵元の有志によって「奈良県 菩提酛による清酒製造研究会(菩提研)」が立ち上げられ、現在では人気を集めています。
「菩提研」のメンバーと代表銘柄は、以下のとおりです
- 今西酒造:みむろ杉、三諸杉
- 上田酒造:生駒宝山、嬉長
- 葛城酒造:百楽門
- 菊司醸造:菊司
- 倉本酒造:金嶽。KURAMOTO
- 油長酒造:風の森
- 北岡本店:八咫烏
それでは、今西酒造【三諸杉 菩提酛 純米酒】のレビューに入ります。
外観については、クリスタルがかったやや淡いイエローの色調が、味わいの深みを予感させます。
香りについては、芳醇な第一印象です。
やや青みがかった黄色バナナの香りが広がり、ミネラル香と見事に調和。
メロンとライチ、杏仁豆腐の香りが繊細に繋がり、軽いラムネ香やヨーグルト香も感じられます。
お米由来の香りは控えめで、飲むとお米の香りが広がります。
味わいについては、第一印象は強く、ふくよかな甘味。
そして、しっかりした酸味と旨味を伴った苦味がすぐに調和し、力強い味わいながらも重たくはありません。
バランスは豊潤で厚みがあり、余韻はやや長め。
それでいて後味はさらりとしており、軽やかに苦味も甘味もフェードアウトしていきます。
温度を上げると菩提酛らしい甘味を感じやすくなります。
よって、スッキリと飲みたい時は冷酒、じっくりと飲みたい時はぬる燗が良いです。
旨味や酸味のある発酵料理との相性が良好です。
僕は酸菜白肉鍋と合わせたところバッチリでした!
今西酒造【三諸杉 菩提酛 純米酒】のスペックについては、以下のとおりです。
- 醸造元(製造者):今西酒造株式会社(奈良県桜井市)
- ブランド名:三諸杉 菩提酛 純米酒
- 特定名称:純米酒
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- 原料米:ヒノヒカリ
- 精米歩合:70%
- 酵母:正暦寺酵母
- アルコール度:16.5%
- 日本酒度:-6
- 酸度:2.7
- 価格(720ml):1,870円
今西酒造【三諸杉 菩提酛 純米酒】については、タイミングによってはAmazonでも購入できるようですが、時期限定なので時期を逃さない事が重要です。
テイスティングの技量を上げて行きたい、すしログ(@sushilog01)でした。
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