こんにちは、鮨と日本酒をこよなく愛する、すしログ(@sushilog01)です。
さて、大阪を代表し、素晴らしいお酒を造る蔵「秋鹿酒造」さん。
この度、稲の刈り取り前の9月上旬に見学させて頂きました。
幹事さんのご尽力もあり、奥 裕明社長とご家族の皆さまにご案内頂き、感慨無量!
見学と試飲、レストランでのペアリング会を経て感じた率直な感想は、以下のとおりです。
「渋い」イメージの酒蔵さんでしたが、僕の認識が間違っていました。
酒質のバリエーションが豊富で、面白い酒蔵さんです!
一言で述べると、「秋鹿酒造」さんのお酒だけでフルコースのペアリングを行えるほどだ、と感じました。
本記事で「秋鹿酒造」さんの魅力が伝われば望外の喜びです!
★全国6,000軒以上を食べ歩く食好き
☆食べログTOPレビュアー、TVに8回出演
★「すしログ」のTwitterにて幅広い情報を発信中
☆インスタ「酒ログ」でテイスティング情報を発信
★すしログnoteで鮨・グルメに関する記事を執筆
タップできる目次
「秋鹿酒造」さんは、1886年(明治19年)に大阪府豊能郡能勢町で創業された酒蔵です。
自然豊かな山間部に位置し、日本の原風景を感じさせてくれる場所にあります。
生産する清酒は、全量、純米酒のみ(要はアルコール添加を行わない酒蔵さん)。
しかも、自社田での栽培と契約栽培による無農薬米を使用。
丁寧に醸されたお酒は、米の旨味がしっかりと感じられ、酸味が利いた深い味わいが特徴です。
春から夏にかけては米作り、秋から冬にかけては酒造りと、「理想的」な酒蔵の姿を実現しています。
「秋鹿酒造」さんは「大阪府豊能郡能勢町」にあります。
能勢町は大阪の最北端に位置する町。
地図からは山奥のような印象を受けるかもしれませんが、意外にも大阪駅(梅田)から90分ほどで行けます。
最寄り駅の妙見口駅であれば、たったの54分です。
…とは言え、皆が「大阪」と聞いて思い浮かべる風景とは全く異なります。
なので、言わずもがな酒蔵さんの周囲の環境は素晴らしく、空気が美味しいです。
「秋鹿酒造」さんは「米作りから酒造りまで一貫造り」をモットーに掲げています。
要は今で言う「ドメーヌ酒蔵」の走りです。
しかも、農薬や化学肥料を一切使用せず、自社の副産物である籾殻、米糠、酒粕で発酵堆肥を作り、山田錦や雄町などの酒米を栽培しています。
僕は山同敦子さんの名著『愛と情熱の日本酒』で知って以来、ずっと訪問したいと思っていました。
現在の耕地面積は、田んぼの枚数で言うと140枚だそうです。
そして、お米の品種については、山田錦、雄町、コシヒカリ(食用)。
奥社長は「お米作りに関しては農家の方が当然上。酒蔵だからこその米作りを目指しています」との談。
また、下記のようにも仰っています。
「量ではなく、品種の良さを引き出す米作りを行っています」
「山田錦の生産量は通常の農家さんの1/3弱。なので、うちは綺麗な原料米を作り、溶けやすくすることを心がけています」
ただ、見学させて頂くと、これらのお言葉は一部合っていて、一部間違っていることに気付きます。
奥社長はご謙遜されていますが、米作りへの設備投資は徹底されていて、下手な米農家以上の情熱をお持ちなので!
非農業業種での米作りに対する情熱としては、京都宮津の「飯尾醸造」さんと並ぶほどだと、心から感銘を覚えました。
良いお酒、良いお酢は、良いお米なくして成り立たないんだと。
まず、こちらの種苗ポットをご覧ください。
一枚のポットに種を2~3粒ずつ手作業で入れて種苗を育てるそうです。
トータルの枚数は何と7,000枚!
それを27~28町歩の田んぼに設置するそうなので、計り知れない作業量です。
「町歩」は現代人には「はて?」と感じる度量衡ですが、東京ドームは約4.7町です。
つまり、秋鹿さんの田んぼは平米に換算すると、267,768~277,686㎡にもなります。
しかも、この苗箱ポットは、普通の苗箱が10~15年もつところ5年しかもたないそうです。
秋鹿さんは除草剤を使わない米作りをされているために、このような育苗を行っています。
一番の雑草対策は「田んぼに水が張れていること」との談。
さらに根が水分を上げられるようにするために稲刈りのギリギリまで水を張る。
「自社田」や「ドメーヌ蔵」と言う言葉には、意識が高く優雅なイメージがあるかもしれませんが、並々ならぬ労力で実現されていることを実感します。
長年の酒米づくりに長けておられるのは、設備投資で分かります。
印象的だった農機が、スガノ農機の「均平職人」。
水が多くない土地なので田んぼを平らにする必要があるそうで、4~5年に一回平らにしているとの談です。
これは高額ゆえに多くの農家さんが持っているものではないので、一般農家に貸しているそうでビックリしました。
そして、秋鹿さんは水田を4回に分けて耕すそうです。
一連のご説明を伺った後に、田んぼに移動しました。
雄町
山田錦
2023年の収穫は10月頭〜中旬を予定していたそうですが、もっと遅くなりそうだ、との談でした。
この記事を書いている12月の段階で、今年は猛暑のために全国各地でお米が不作だったことを知っています。
またエリアによってはお米が溶けづらく、2022年よりもお酒の味が淡いお酒もあるそうです。
秋鹿さんの田んぼを見学させて頂いたお陰で、酒造りは米作りであり、自然との共生と克服なのだと実感できました。
日本酒(清酒)とは、実に日本的で崇高なお酒です。
「秋鹿酒造」さんのお酒は、酒質のバリエーションが広く、銘柄ごとに味が大きく異なります。
しかも季節限定酒を加えると年間40種以上ものお酒を造る、驚異的なドメーヌ酒蔵さんです。
この度、多数のお酒をテイスティングさせて頂きつつ、その後のレストランでの懇親会でもペアリングで頂きましたが、多様な酒質設計に驚きました。
冒頭に書いた通り、「秋鹿酒造」さんのお酒だけでフルコースのペアリングを行える、と感じた次第です。
次の項目で、その一端をご紹介します。
本項では「秋鹿酒造」さんのお酒を楽しめるフレンチレストランを紹介します。
そのレストランの名は、ときわ台にある「Le tonton(ル・トントン)」さん。
フレンチレストランですが、秋鹿さんのお酒も置かれています。
エリア的に貴重な、美味しいレストランです。
シェフは辻調で33年も講師を務めた方で、教え子はなんと13万人を超えるそうです!
現代的な感性とシェフのセンスに基づき、意外性がある食材の取り合わせや調味料使いもされているので、誰もが楽しめるフレンチだと思います。
油脂や塩味を抑え、全て野菜出汁を用いる手法もモダンで素敵です。
豚肩ロースの自家製ハム
豚肩ロースの自家製ハムにはマーガオ。
繊維質はしっとりと柔らかく、口どけが良いハムにマーガオの爽やかな香りが面白い。
合わせる日本酒は協会28号酵母で醸したお酒。
リンゴ酸を多く産み出す酵母を使用しつつ、自社田の山田錦の旨味と合わせる意欲作。
酸味、甘味が気持ち良く調和し、一口目から「旨い!」と感じた。
野菜
前日から当日の朝までオーブン焼きした玉ねぎ、キャロットラペとそうめんカボチャ、ベビーリーフに唐墨のアリオリソース(魚醤、シェリービネガー、シークァーサー)、炭焼の鰹のもろみ漬けを添えて。
押しなべて発酵の旨味が活きているのが嬉しい!
野菜はどれも美味しく、時に黄色のミニトマトが激甘で衝撃的。
淡路の真鯛
まさかのカルタ・ファタ(イタリア産の耐熱クッキングラップ)を使用!
ブレゼ(蒸し煮)にされている。
香草、パスティス、梅のマーマレードと共に。
実に複雑な香り!
牛肉
ウチヒラは北海道産、ミスジは新潟県産。
牛肉もさることながら野菜も美味しい!
麹、トウモロコシのスープ
8日かけて複雑な味わいを表現したスープ。
麹も使用されているため、油脂を使わずに奥深い味わいを楽しませてくれる。
トウモロコシの品種は北海道産ピュアホワイトの他に数種使用されているそう。
パン
ケーキ
コーヒー
本記事がきっかけとなり、「秋鹿酒造」さんの魅力が伝われば望外の喜びです!
僕も機会を作って色々試して、テイスティングの記事でも魅力を発信していきたいと思います。
最後に、まとめとして「秋鹿酒造」さんのお酒を入手できるお店を紹介します。
店名に張っているリンクは、Googleマップとなります。
- おそのえ商店(茨城県大洗町)
- 淀川酒店(栃木県宇都宮市)
- 君嶋屋(神奈川県横浜市)、銀座店、恵比寿店
- セキヤ(東京都台東区)
- ふくはら酒店(東京都台東区)
- 酒の勝鬨(東京都中央区)
- 升新商店(東京都豊島区)
酒蔵さんへの敬意を深める、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事のリンクには広告がふくまれています。