こんにちは、鮨と日本酒をこよなく愛する、すしログ(@sushilog01)です。
前回は「醪」について、説明しました。
今回のDay.5については、「醪」の次のプロセスである「上槽」に入ります。
これは醪を清酒に変える作業です。
搾っていない「醪」の段階では、まだ「どぶろく」で「清酒」ではありません。
「上槽」で搾ることで初めて一般的に日本酒と考えられている「清酒」になります。
※本記事は2022年度のテキストである『SAKE DIPLOMA教本 Second Edition』(2020/3/1)に基づきます
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日本酒の造り:上槽(搾り)
「上槽」とは、「醪を清酒と酒粕に分けること」です。
「槽」という器具で搾るため、「上槽」と呼ばれる次第です。
槽による上槽
上槽は3つのプロセスに分けられます。
- 荒走り:若々しく、比較的きれいな味わい
- 中取り(中汲み):最も不純物が少ないきれいな味わい、メインの画分
- 責め:アルコール度数が高く、濃厚な味わい
これらを別々に販売する蔵もあれば、ブレンドして販売する蔵もあります。
槽以外での上槽
そして、槽以外の搾り方もあり、下記のとおりです。
自動圧搾機
アコーディオンのような形状の機械で、現在最も多い方法。
搾るのが速いため、微発泡の状態での上槽も可能。
雫搾り
雫取り、袋吊り、斗瓶囲いとも呼ばれる。
酒袋を吊って、自重で絞る方法なので、非常にきれいな味の日本酒が搾れる。
斗瓶と呼ばれる、18L=10升入る瓶に詰める。
1~2本目の最も良いものは鑑評会に出される。
1本目は粗く渋く若々しい、最後の方ほど熟成感や旨味や幅のある味になる。
にごり酒・活性清酒
ざる様の網目(ステンレス製)で荒ごしする搾り方。
そして、造られるお酒が「にごり酒」。
火入れを行っていないにごり酒は「活性清酒」と呼ばれる。
上槽後の日本酒の造り:割水と原酒
日本酒は、上槽後に割り水を行うのが一般的です。
アルコール度数を、20%から15~16%に落とします。
上槽後に加水調整していないものが「原酒」と呼ばれます。
※1%以内の加水は「原酒」
アルコール度数が高い「無ろ過生原酒」は近年のトレンドになっています。
しかし、逆に、低アルコール濃度(12%程)の清酒も増えています。
上槽後の日本酒の造り:滓(澱)引きと濾過(ろか)
さらに、上槽後に行うことがある手法で、「滓(澱)引き」と「ろ過」があります。
日本酒の滓(澱)引き
上槽後の日本酒には、デンプン、不溶性タンパク質、清酒酵母などが浮遊しています。
これが「滓(澱)」です。
上槽後にしばらく放置することで、タンクの底に滓が沈殿してきます。
そこで、澄んでいる上の部分を抽出することを「滓引き」と呼びます。
滓引きは上についた「呑み穴」から抽出します。
滓の上にある呑み穴なので、「上呑み」と呼ばれます。
そして、滓引きを行わないお酒を「おりがらみ」と呼びます。
「おりがらみ」の多くは、新酒が出回る晩秋から冬にかけて出荷されます。
ちなみに、酒造年度(BY)は「7月1日」から始まります。
「日本酒の元旦」と呼ばれます。
そして、少しややこしいですが、「日本酒の日」は「10月1日」です。
これは1896年(明治29年)から1965年(昭和40年)までは、酒造年度が10月開始であった名残です。
このあたりに出るお酒が「冷やおろし」。
寒造り(12月から2月頃まで)した酒を半年以上貯蔵して、熟成させたお酒です。
「おりがらみ」と「冷やおろし」は混同されがちですが、新酒と寝かせたお酒で真逆になります。
日本酒のろ過
日本酒のろ過の目的は、色をクリアにするためです。
上槽後の日本酒はグリーンがかっていますが、これを無色透明するのが、ろ過。
昭和ひとケタの頃に、鑑評会で無色透明が重視されたことが理由だそうです。
ただ、色とともに風味も除かれることになるので、最近は「無ろ過」を行う蔵が増えています。
ろ過の手法としては、炭素ろ過(炭ろ過、活性炭ろ過)が伝統的です。
これは粉末状の活性炭をタンクに入れて、色味や雑味を吸着させて、その後ろ過器に通す方法です。
これにより無色透明になりますが、お酒の風味も取り除かれてしまいます。
現在最も一般的なろ過方法は、滓引き後にろ紙フィルターを装着したろ過器に通す方法です。
補助剤として珪藻土やセルロースが用いられます。
また、メンブランフィルターや中空糸膜を用いた精密ろ過器も登場しています。
なお、「無ろ過」については酒税法上で明確に定義されていません。
そのため、「完全に無ろ過」、「固形物を除くための粗目のフィルター以外でろ過をしない」、「活性炭ろ過をしない」などなど、製造者によって解釈が異なります。
無ろ過酒は一般的に「搾ったままの爽やかさや、旨味の濃さ」が特徴となり、ろ過したお酒は「スムーズな飲み口で、スッキリした味わい」が特徴になります。
日本酒の造り:瓶詰めと火入れ
最後に、日本酒の「瓶詰め」と「火入れ」です。
火入れについては、60℃~65℃で行われます。
行う意義は、お酒に残った酵素の働きを止めるためと、火落ち菌を死滅させるためです。
お酒は右肩上がりに美味しくなるのではなく、ジグザグに美味しくなる性質を持つため、火入れを行い、酒蔵が一番美味しいと思うタイミングで味を止めるメリットがあります。
火入れの手法については、いくつかあります。
- 蛇管式:一般的
- プレート式熱交換器
- 燗瓶火入れ:フレッシュな香味を重視する場合に行われる(手作業)
- パストライザーウォーマー/クーラー:徐々に温度を上げて殺菌できる
これで日本酒が完成しました!
次は、速醸以外での日本酒の造り方(酒母の作り方)を説明します。
Day.6で会いましょう。
日本酒大好き、すしログ(@sushilog01)でした。
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