こんにちは、食材・調味料ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
料理好きならば恐らく複数種類常備している、醤油。
「こいくち(濃口)醤油」と「うすくち(淡口)醤油」は味がハッキリ違うので、料理によって使い分ける必要があります。
ただ、関東は「こいくち醤油」主体なので、関東や東北では「うすくち醤油」を買ったことがないと言う人も多いかもしれません。
しかし、だからこそ「うすくち醤油」を使うと、料理の味がガラリと変わるのでオススメします。
食通であり芸術家であり料理ヲタであった北大路魯山人先生も「うすくち醤油」を多用しています。
それについては、その名を冠する【魯山人醤油】の記事で言及しました。
この【魯山人醤油】はメチャクチャ美味しい醤油ですが、高級であり少量である点がネックです。
なので、自分も後がけの用途で使っています。
今回は「うすくち醤油を買ったことがない」、あるいは、「美味しいうすくち醤油を知らない」と言う方に向けて、普段遣いできる超オススメの一本をお伝えしたいと思います。
製品名は、井上醤油店の【こはく】です。
「うすくち醤油」とは?
そもそも「うすくち醤油」とは何か?について、簡単にご説明します。
「うすくち醤油」が「語感とは裏腹にこいくち醤油よりも塩分濃度が高い」ということは、知っている人が多いかもしれません。
しかし、「うすくち醤油」を作っている代表的なメーカー名をすらすらと挙げられる人は少ないのではないでしょうか?
「こいくち醤油」ならばキッコーマン、ヤマサ、ヒゲタ、正田醤油など名前がすぐに挙がるところ。
「うすくち醤油」で有名なメーカーとなると、調味料好きな方でも難しいかもしれません。
その理由は、やはり「うすくち醤油」が歴史的に西日本の調味料だからだと思います。
前述の魯山人は「うすくちだと、龍野のものが良い」と言っており、兵庫県たつの市が名産地となります。
たつの市にはヒガシマル醤油と言う大手メーカーもあるので、西日本の人ならば「何を当たり前のことを」と思われるかもしれません。
しかし、「うすくち醤油」の全国の流通量は13.4%程度で、「こいくち醤油」の83.4%に比べると圧倒的に少ない。
東に住む人間にとっては文化的に「うすくち醤油」を選びにくい次第です。
その上、東日本のスーパーでは「うすくち醤油」のメーカーが少ないので、何を選べば正解なのか分かりづらいと思います。
そこで、今回は1択に絞り、自身が最も好きな「うすくち醤油」をご紹介する次第です。
もちろん、味に加えて入手のしやすさも考慮しました。
どんなに美味しくても入手しづらかったら普段遣いできないので…。
「うすくち醤油」の傑作、井上醤油店の【こはく】
今回ご紹介する【こはく】は、井上醤油店さんで作られています。
そして、井上醤油店さんは島根県の「奥出雲」と呼ばれるエリアにある醤油蔵です。
「奥出雲」は日本の神話の舞台となっています。
中でも「ヤマタノオロチ伝説」は最も有名でしょう。
また、「たたら製鉄」と言う古い製鉄が活きていて、山間部に文化が息づく、ミステリアスなエリアとなります。
出雲横田には美味しい奥出雲蕎麦の名店が点在し、近年ではブランド米【仁多米】が有名です。
【仁多米】は「東の魚沼コシヒカリ、西の仁多米」と称される程の食味を誇っていますね。
蕎麦、米だけでなく酒蔵もあり、つまり、水が美味しいエリアである事が分かります。
井上醤油店は1867年(慶応3年)創業と言う老舗です。
国産の丸大豆と小麦のみを使用し、合成添加物は使わないと言う、あるべき姿の醤油蔵です。
醤油はもともと発酵調味料なので、化学的な旨味や保存料を加える必要などありません。
化学的な旨味や保存料を加えた醤油は「醤油風調味料」になってしまうのではないでしょうか。
料理を愛する人であれば、是非とも本物の醤油を使って欲しいところです!
また、醤油を変えると料理の味が劇的に変わるので、美味しさを底上げできる点もメリットだと思います。
甘酒を用いて仕込む【こはく】の美味しさ
井上醤油店の醤油のラインナップについては下記の通りです。
- 古式じょうゆ:こいくち(濃口)醤油
- こはく:うすくち(淡口)醤油
- 出雲むらさき:再仕込み醤油
- 醸しの雫:本醸造醤油を素焼きの甕で熟成させた醤油
主力商品である【古式じょうゆ】の原材料は国産丸大豆・国産小麦・食塩で、今回ご紹介する【こはく】の原材料は国産米・国産丸大豆・国産小麦・食塩となります。
つまり、【古式じょうゆ】との違いは国産米(米麹)が入っているところとなります。
「うすくち醤油」は、1666年に前述の兵庫県たつの市(旧称・揖保郡龍野)で生み出され、その時から米を用いているそうです。
醤油もろみに糖化させた米を混ぜることで、うすくち=要は色が薄くなるメカニズムです。
しかし、井上醤油店の【こはく】については、ただ色を薄くするためだけに米を使用するわけではありません。
なんと、甘酒(米麹)を用いて仕込んでいるとのこと。
よって、「まろみのある味」が最大の特徴・魅力となります。
【こはく】は「うすくち醤油」でありながら塩の先鋭的な辛味がありません。
それでいて、塩味がバシッと決まります。
まろやかな甘みと旨味を持った「うすくち醤油」です。
そして、塩分濃度も低めで、一般的な「うすくち醤油」が19%程度であるのに対して、【こはく】は15%程度とのことです。
「こいくち醤油」は一般的に約16%と言われるので、実は塩分濃度が低い「うすくち醤油」となります。
また、これは僕の推測となりますが、ただ甘酒(米麹)を加えてるだけで特徴的な「まろみのある味」になるわけではないと思います。
井上醤油店は「加熱処理、酵母添加による醸造促進を施さず、ひとの介入は最小限に抑え、自然に委ねる」造り方をされています。
よって、蔵付きの菌のお陰も多分にあるのだと思います。
全ての発酵調味料は気候、風土、菌、職人の技術が合わさっての総合芸術。
それらの高度な一致がある醤油こそが、井上醤油店の醤油なのだと感じます。
【こはく】を用いた調理アドバイス
最もシンプルなものだと、刺身の付け醤油がオススメです。
青魚や旨味の強い赤身の魚(マグロやカツオ)にはこいくち醤油がベターですが、白身魚や貝類には【井上こはく】がバッチリ合います。
醤油のフレイバーが上品で、「まろみのある味」なので、魚の味わいを壊さない点が魅力です。
そのような特徴を持つので、和風テイストのパスタを作る時も、ピッタリ合います。
和風テイストのパスタで醤油の選択を見誤ると急激に野暮ったい味になってしまいますが、【井上こはく】であれば不思議なほどに上品に仕上がります。
もちろん、炊き込みご飯、お吸い物やサッパリ味の煮物(インゲンやアスパラ)などを作る時も「こいくち醤油」より相性が良いです。
鯛茶漬けの胡麻の漬け地も良い相性です。
濃口よりも遥かに上品な仕上がりとなります。
あとは、TKGこと卵かけご飯。
前述の【魯山人醤油】が最強の相性を誇るものの、常備するには高額なので、手持ちがない時は【こはく】を使用しています。
卵の味も醤油の味も両方楽しむことが出来ます。
そして、強くオススメなのが自家製出汁醤油。
冷蔵庫に常備しておくと非常に便利です。
空きビンに鰹節(写真は鮭節)、干しシイタケ、昆布、唐辛子を入れて、【井上こはく】を注いで待つこと2~3日。
市販の出汁醤油よりも遥かに美味しいマイ出汁醤油の完成です!
濃口醤油しか使ったことが無いと言う方、是非とも使ってみてください。
あるいは過去にうすくち醤油を買ったものの、塩辛かったと言う方、【こはく】ならばイメージが変わるかと思います。
↓念の為、こちらが井上醤油の濃口となります。
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