すしログ No. 350 すし処 志喜@銀座

明らかな改善点を見直せば、必ず光る鮨店

2020年10月6日に放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」。

特集は逗子の魚仲買人・長谷川大樹さん。

今や魚好きであれば知らない人はいないであろう、長谷川さんですね。

各地の料理店で長谷川さんの魚を頂いてきたので、番組を心から楽しく観させて頂き、長谷川さんの仲買人としての凄さと人間的な魅力を再認識しました。

さて、その番組で紹介されて大変美味しそうに感じたのが、今回の「すし処 志喜(しき)」さんです。

長谷川さんの魚を巧みに扱い、フォルムの良い鮨に仕上げておられました。

なので、番組終了直後に予約電話をして、訪問した次第です。

 

 

すし処 志喜さんの立地と雰囲気

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お店は東銀座にあり、駅から徒歩2〜3分の好立地です。

すぐ近くに名店の二葉鮨さんやほかけさんがあります。

ビルの3階に入っていますが、1階ビルの外に看板があるので、見落としにくいです。

ビルは築年数35年で少々くたびされていますが、店内は清潔感が保たれています。

席数はカウンター9席で、漬け場を囲むような「し」の字型の配置です。

新コロ対策で入り口が開かれていますが、ブランケットを配布されるなど、冒頭から女将さんが配慮してくださりました。

 

すし処 志喜のコース内容について

親方の吉村匡史さんは岩手県出身ですが、使用するお魚は前述の長谷川さんの仕立てによる相模湾のものが中心のようです。

コースは3つ用意されていて、12,000円、15,000円、18,000円。

今日びの銀座ではリーズナブルな価格設定です。

各コースの違いは、12,000円が「握りメインのコース」で、後の2つは「酒肴が多くて価格差は握りの数の違い」との事です。

僕は握り原理主義者なので当然12,000円を選択しました。

内容としては、酒肴2品の後に握りが15貫に椀代わりのスープと玉子。

すし処 志喜の握りについての概観

頂いた感想としては、「非常に残念」だと感じました。

その理由は握りを求めるお客に向き合っていない点。

具体的に申し上げると、下記の3点です。

  1. 酒肴付きのコースを優先する提供
  2. タネは訪問前に切りつけて、冷蔵庫保存
  3. 握りは各自に都度出さず、握り溜めして提供

酒肴付きのコースに合わせるため、握りの提供スピードが速すぎなのです。

握りを下駄に置いた瞬間、僕が手を付け口に運ぶ前に次を握られ、なんと3分以内に5貫が提供されました。

「酒肴付きのコースの酒肴を作る間に握り終えよう」と言う魂胆が見えてしまい、ハッキリ申し上げて無粋の極み。

ランチのおきまりならいざ知らず、銀座でコースを予約しているのにお客と向き合わない握りです。

さらには女将さんにお酒を伺い、女将さんが応対されている間に下駄に握りを置いていく姿には、心から失望いたしました。

現状、「飲み目的」の方には良いかもしれませんが、「握り目的」で鮨店に行く人にはオススメ出来ません。

 

握り、仕事については面白いものが散見されるだけに、本当に残念です。

例えば、墨烏賊ひとつ取っても独自の切りつけを行っている点が魅力的ですし、熟成の塩梅も良く、提供ペースが良ければじっくりと味わい個性を感じる握りだと思います。

 

シャリは米酢と赤酢の2種類を用意されていて、各タネとの相性は良好です。

米酢のシャリはお米の香りがあり、酸味がキリッと広がり、炊き加減はやや硬め。

5手ほどで握られ、口の中でぱらりとほどけます。

赤酢のシャリはかなり硬めに炊きつつ、もっちり感があります。

こちらについては温度が低い点は改善点。

かなり硬めなのに温度が低いため、アルファ化せずお米の良さ(甘み)が引き出されません。

表面にザラつきもあるので、敢えて2種類使用しなくて良いのでは?と感じた次第です。

 

また、タネについても冷蔵庫温度な点が残念。

これは上述の提供ペースが影響しているのかもしれません。

赤酢のシャリに変わったタイミングで、シャリ温が低いことも相まって特に実感しました。

老舗はさて置き現代の鮨店において、タネを室温に馴染ませて温度調整するのは定石です。

これは惜しいな…と感じました。

 

今回はちょこっとシビアな内容になってしまいましたが、個性を感じるのは間違いありません。

個性が玉になるか石になるかは認識と行動次第だと思います。

折角お持ちの個性とセンスを玉に昇華されるべく、課題を解消されることを願っています。

すし処 志喜の握りについての詳細

この度頂いたお酒

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取り扱われているお酒は、親方の出身地・岩手のお酒中心で非常に魅力的です。

ビールはベアレンに加えて遠野のズモナビールがありました。

なので、【ゴールデンピルスナー】900円を頂きました。

日本酒は【浜千鳥・純米大吟醸美山錦火入れひやおろし】を。

 

 

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丹波黒豆

香りが良い枝豆。

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シロカワカジキの生ハム

脂が乗っていて、同時に凝縮感は正に生ハム!

カジキの香りも楽しませてくれる。

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これには期待値がグッと高まり、訪問して良かったと思わせてくれた。

…結局、この後親方自らの手により失望に変わるのですが。

 

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ガリ

辛みと酸味が強めで、甘みはほぼ無し。

食感はシャキシャキ。

キリッとしたタイプのガリ。

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墨烏賊

厚みと歯切れを両立させた切りつけによって、バツッと墨烏賊らしい豪胆な食感に。

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ヒラスズキ

旨味がしっかりしていて、香りも良い。

熟成の腕を実感。

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春子

昆布〆でしっとりした〆加減。

昆布の香りを割と乗せているが、それは嫌味にならず塩梅が良い。

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ウマヅラハギ

むっちり且つにゅるりとした食感の身で、寝かせている模様。

肝の旨味と香りを活かしていて、赤酢のシャリとの相性も良い。

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金目鯛

むっちりした身はパツリとほどけ、生っぽくも凝縮されている、魅力的な食感。

このあたりまで超高速で出されたので、一貫一貫に向き合えれば…と残念。

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小鰭

酸味を強く浸透させた〆加減。

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キハダマグロ

寝かせ方が良く、食感に妙あり。

口当たりはみっちりしているが、しっとり、ほろりとほどける。

キハダの軽やかな酸味がシャリと合う。

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シロカワカジキ

むっちりした身を噛みしめるほどに脂が込み上げてくる。

これは下手なトロを用いるよりも遥かに面白い!

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車海老

甘みと香りを引き出した、良い茹で上げ(女将さんの仕事)。

身はしっとりとほどけ、甘みが強く広がってゆく。

さらに、シャリの酸味が甘みを引き立てる。

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バフン海胆軍艦

海胆の香りが強いバフン海胆。

冷たい点が残念。

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小鰯

良い〆加減で、しっとりほろりとほどける。

鰯としては割としっかり目の〆加減。

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生っぽいが、とろっととけるような食感。

…初手はシャリに合うように感じたが、噛みしめるとお米の硬さが気になり、一体感に欠ける。

お米の甘みが寄り添わず、タネとシャリが分離するのだ。

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酸味と上品なスモーキーフレーバーが魅力の鰹。

薬味の使用量が程良く、センスがある。

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いくら丼

生と半熟を乗せる大変ユニークな試み。

ゴマを少量混ぜて。

生は強めの出汁醤油漬けで、これ単体だと出汁が強いように感じるが、濃密に舌に絡みつく半熟と組み合わさることで相乗効果を発揮する。

これは面白い!

…が、シャリ温がもっと高ければ!と心から感じた。

シャリが冷たいので、いくらの旨味が活かしきれないのである…

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穴子

柔らかすぎず、しっとりほろりとほどける穴子。

熱源はもしかすると炭火かもしれない。

炭火ならば凄い。

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フエダイのスープ

強い旨味と野趣ある香りの潮汁。

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玉子

プリン状だが、甘みが弱めの玉子。

海老以外に魚介も使用している気がする。

 

以上、二人で29,810円。

銀座としてはお安いものの、前述の提供スタイルを考慮すると、精神的な消化不良を覚えました。

なにせ提供スピードが速く、淡々としているので食の連続性がありません。

食の満足度は味だけではないことを再認識しました。

 

個人的に、「鮨の美味しさの構成要素」は下記なのかな…と感じるきっかけになりました。

  • シャリの美味しさ
  • シャリに合う仕事
  • タネの美味しさ
  • 提供ペース
  • 雰囲気

 

親方が更なる飛躍を遂げられることを心より願っています。

今のままだと、折角の仕込みが勿体ない!

 

店名:すし処 志喜(すしどころ しき)

シャリの特徴:硬めの2種類のシャリを併用。

予算の目安:コースは3種類。12,000円、15,000円、18,000円(税抜き)

最寄駅:東銀座駅から180m

TEL:03-6228-7029

住所:東京都中央区銀座4-8-13 銀座蟹睦会館ビル3F

営業時間:18:00~23:00 ※最終入店時間21:30まで

定休日:日曜、祝日

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